海外FX取引をしている人の中には、複数の海外FX会社の口座を持っている人や、1つの海外FX会社で複数口座を保有している人がいます。
複数口座でそれぞれ利益・損失が出ていると、確定申告のやり方で悩んでしまうかもしれません。
今回は複数口座を保有している場合の確定申告のやり方について詳しく解説していきます。
海外FXにおける税金の基本
まず最初に、海外FXで利益を出した際の税金の基本的な部分を確認していきましょう。
海外FXの利益における税制について | |
所得の分類 | 雑所得 |
課税方式 | 総合課税 |
所得税 | 所得が高いほど税率も上がる(最大税率45%) |
住民税 | 10% |
損失の繰り越し | できない |
海外FXの利益は「総合課税」という課税方式が適用されます。
総合課税では雑所得(海外FXでの利益)とその他の給与所得や事業所得などを合算した金額で所得税を算出します。
また総合課税では、年間の利益から経費や所得控除などを差し引いた「年間所得」が高くなるほど税理率も上がっていくのが特徴です。
税率は以下の通りです。
例として
- 海外FXでの年間利益が100万円
- 海外FX取引に関する経費20万円
- 会社から受け取る給与所得300万円
の場合は年間所得が380万円となり、上記の表で見てみると所得税の税率は20%となります。
海外FXの損益は損失繰越できない
損失繰越とは、最大3年間は損失額と利益を相殺できる制度です。
損失繰越は海外FXの損益では適用されません。そのため利益が出た年は、これまでいくら赤字が出ていても税金を支払う必要があります。
複数口座で利益を出すなら損益通算と内部通算の知識も必要
損益通算とは?海外FXでの利益には適用できない
損益通算とは、黒字の所得から赤字の所得を差し引くことをいいます。損益通算は全ての所得に適用されるわけではなく、以下の4つの所得にのみ適用されます。
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 山林所得
海外FXの所得は「雑所得」なので、損益通算できません。
内部通算とは?海外FXでの利益にも適用できる
内部通算とは、同じ税区分の所得であれば赤字と黒字を相殺できる制度のことです。
海外FXで得た利益は「雑所得」になるので、他の雑所得の赤字と黒字を相殺できることになります。
そのため海外FXで複数口座持っている場合は、全ての口座の赤字と黒字を相殺しましょう。
海外FXの利益と内部通算できる所得には、他にも以下のようなものがあります。
海外FXのA口座で+200万円・海外FXのB口座で-50万円・アフィリエイト収入が+10万円ある場合は、内部通算して160万円が総所得となります。
海外FXでの利益と日本FXでの利益は別々に計算しよう
海外FXで得た利益は「雑所得」ですが、日本FXで得た利益は「先物取引に係る雑所得等」に分類されます。
同じFX取引による利益ではありますが所得の分類が異なるので、海外FXの利益と日本FXでの利益は内部通算もできないため別々に計算する必要があります。
仮に海外FXで50万円の利益がでて、日本FXで150万円の損失を出したとしても、海外FXの利益50万円に対する税金は発生することになります。
複数口座を持っている場合の確定申告のやり方について
- 海外FXA社・B社・C社の口座を保有している
- 海外FXA社で100万円の利益・B社で50万円の損失・C社で50万円の利益が出た
という条件で、確定申告のやり方を解説していきます。今回は国税電子申告・納税システム「e-tax」を使って解説していきます。
年間取引報告書で損益を確認する
まず複数口座全ての「年間取引報告書」をダウンロードして、それぞれの口座の利益・損失を確認しましょう。
年間取引報告書は取引に使っているMT4やMT5からダウンロードできます。
年間取引報告書のダウンロード方法は以下の記事を参考にしてください。
収入金額・所得金額を入力する
まず収入金額・所得金額を入力していきます。
海外FXの利益は雑所得なので、所得の種類「雑所得」の「業務・その他」の「入力する」を選択します。
この画面では「入力する」を選択します。すると「雑(その他)所得の入力」画面に移ります。
詳しい入力の仕方は以下の通りです。
- 種目では「その他」を選択し、下に「証拠金取引」と自分で入力する
- 業務に該当しますかは「いいえ」を選択する
- 収入金額は海外FXで得た利益を記入。マイナスの場合は「-100,000」というように記入する
- 必要経費があれば記入する
- 源泉徴収税額には「0」を記入する
- 所得の生ずる場所には利用した海外FX会社本社の住所を入力する
- 報酬などの支払者の氏名・名称には海外FX会社の運営会社の名前を記入する
複数口座持っている場合は1件ずつ損益を入力していくので、1社終わったら「続けてもう1件入力」を押して同じように入力していきましょう。
今回は「海外FXA社で100万円の利益・B社で50万円の損失・C社で50万円の利益が出た」と仮定しているので、全て入力すると以下のように表示されます。※今回は必要経費は0円としています
「相続等に係る生命保険契約等に基づく年金(保険年金)の入力」に関しては、相続等に係る生命保険契約等に基づく年金(保険年金)の受給があれば「はい」を、なければ「いいえ」を押して「次へ進む」を選択します。
雑所得に「1,000,000」と表示されました。これは3つの海外FX口座の損益が内部通算された結果です。
海外FX以外に事業で利益を出ている人は「事業所得」を、会社員で給与を受け取っている人は「給与所得」も入力しましょう。
所得控除の入力
所得の入力が終わると「所得控除の入力」に進みます。所得控除とは、所得の合計金額から差し引かれる金額のことで、税金の負担を減らすための措置です。自分に当てはまる控除があれば全て入力しましょう。
所得控除については以下の記事を参考にしてください。
税額控除・その他の項目の入力
所得控除の入力が終わると「税額控除・その他の項目の入力 」に移ります。
税額控除では
- 配当控除
- 投資税額等控除
- 住宅借入金等特別控除
- 政党等寄附金等特別控除
- 住宅耐震改修特別控除
- 住宅特定改修特別税額控除
- 認定住宅新築等特別税額控除
- 災害減免額
- 外国税額控除等
の中で当てはまるものがあれば入力します。
その他の項目では
- 専従者控除額の合計額
- 平均課税対象金額
- 変動・臨時所得金額
- 本年分で差し引く繰越損失額
の中で当てはまるものがあれば入力します。
複数口座で取引したら全ての損益をしっかり申告しよう
複数口座で取引していて利益が少ない口座があった場合でも、必ず全ての口座の損益を申告してください。
海外FXでの利益であっても日本の税務署は把握しているので、正しく確定申告することが大切です。
複数口座であっても確定申告の方法は難しくないので、手順に沿ってひとつずつ確実に進めていきましょう。
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